研究概要 |
血管のα_1アドレナリン受容体は均一ではなく,サブタイプの存在が示唆されている。本研究では,血管のα_1アドレナリン受溶体を世界に先駆けて3つの分類し,その生理的意義を明らかにした。 1.α_1サブタイプの分類:血管のα_1アドレナリン受容体を各種アンタゴニストに対する親和性をもとに分類すると,プラゾシンに高親和性のものと低親和性のもの,そのいずれにも属さないものの3つに分類でき,それぞれをα_<1H>,α_<1L>,α_<1N>と命名した。α_<1H>はイヌ頚動脈やヒト冠動脈などに分布し,α_<1L>はウサギ大動脈に,α_<1N>Fイヌ腸間膜動脈に存在した。 ^3Hープラゾシンで結合実験を行ない,3つのサブタイプをアンタゴニストの親和性をもとに識別した。同様の実験を血管だけでなく,大脳皮質,肝臓,肺,輸精管でも行ない,各α_1サブタイプの広い生体内分布を明らかにした。 2.各サブタイプの生理的意義:各サブタイプは一様に生体に分布するのではなく,上述の如く特有の分布を示した。更に,一つの組織に一つのサブタイプが存在する場合と,複数のサブタイプが共存する場合が観察された。サブタイプの共存は,交感神経性アドレナリン性反応が複数のサブタイプを介して惹起していることを示唆した。また,ヒトではノルアドレナリンやプラゾシンに高親和性のα_<1H>サブタイプが血管に広く分布していたことより,α_<1H>サブタイプが他のサブタイプよりも血圧調節に重要な役割をしていることが示唆された。
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