研究概要 |
抵抗血管に存在するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を伝達物質とするペプチド作動性血管拡張性神経の循環調節における役割を調べる目的で、内因性血管収縮物質Angiotensin II(AII)およびNeuropeptide Y(NPY)のCGRP神経伝達機構におよぼす影響を検討した。抵抗血管標本としてラット腸間膜動脈血管床の潅流標本を作製した。標本をKrebs液で定流量(5ml/min)で潅流し、その潅流圧を抵抗血管の収縮張力をして圧transducerで測定し、以下の実験を行った。(1)交感神経の反応を抑制するためguanethidine(5μM)と血管収縮物質のmethoxamine(7μM)を加えたKrebs液で潅流し、血管を収縮物質のmethoxamine(7μM)を加えたKrebs液で潅流し、血管を収縮させて潅流圧を一定のレベルまで上昇させた。潅流圧が一定したとき動脈周井神経を経壁電気刺激(PNS:1,2,4,8Hz)すると、刺激頻度依存性の潅流圧減少すなわち血管拡張反応が出現した。この反応はNPY(1〜30nM)およびAII(10〜100nM)の潅流によって用量依存的に抑制された。また、AIIの前駆ペプチドAIもAIIと同様にこの反応を抑制した。同一標本にて、NPYあるいはAI,AII存在下に伝達物質のCGRPを直接潅流液中に注入して出現する血管拡張作用はNPYによって抑制されなかったが、AIおよびAIIはこの反応を抑制した。AIおよびAIIによる神経性ならびにCGRPによる拡張反応の抑制はAII受容体遮断薬存在下ではみられなかった。2)guanethidineを含むKrebs液で潅流した標本で、潅流液中のCGRPをRIA法にて測定すると、PNS(4および8Hz)によってCGRPの遊離が増加した。この神経性CGRP遊離増加はNPYによって著明に抑制された。以上の結果から、内因性昇圧物質はCGRP神経性拡張反応を抑制的に調節していることが証明された。また、抑制作用機序も異なり、NPYはCGRP神経終末に作用してCGRP遊離を抑制することによって、AIIはCGRP自身の血管拡張反応を抑制することによってCGRP神経伝達を抑制していると考えられる。
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