研究概要 |
強力なCキナ-ゼ活性化物質として知られるTPAは初代培養マウス表皮細胞において、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)の誘導、PGE_2の生成、EGFの受容体への結合阻害を引きおこすことが知られている。TPAのこれらの作用に対するCキナ-ゼ阻害薬(Hー7,staurosporine,sphingosine)の効果を検討したところ,TPAによるODC誘導はHー7により濃度依存的に抑制されたが、TPAによるEGF結合阻害作用には拮抗しなかった。一方、sphingosineはTPAによるODC誘導にも、EGF結合阻害作用にも拮抗した。一方、staurosporineはTPAによるODC誘導を高濃度では抑制したが低濃度(実際にCキナ-ゼを阻害する濃度)では抑制しなかった。TPAによるPGE_2生成促進作用は、Hー7により強く抑制されたが、stauroーsporineでは抑制されなかった。次に無傷表皮細胞におけるTPAによる内因性蛋白のリン酸化を二次元電気泳動法を用い検討したところ,TPAによりリン酸化が促進される蛋白8つと、逆にTPAにより脱リン酸化が促進される3つの蛋白が見い出された。それらの内5つの蛋白は細胞質分画にのみ認められ、1つの蛋白は膜分画(核を含む)のみに認められ、残りの5つの蛋白は細胞質と膜分画の両方に認められた。これらの蛋白はいずれもセリン残基がリン酸化されており、TPA以外のCキナ-ゼ活性化物質(mezerein,RPA,合成ジアルグリセロ-ル)によってもリン酸化が促進されたことからCキナ-ゼによるリン酸化と考えられた。TPAによる内因性蛋白のリン酸化に及ぼす各種阻害薬の効果を検討したところ、リン酸化を受ける内因性基質蛋白により阻害薬の阻害効果が異なり且つ同一の基質蛋白についてもリン酸化を阻害する阻害薬と阻害しない阻害薬が認められ、各阻害薬に見られた細胞反応に対する阻害効果の特異性の少なくとも一部はこれら阻害薬の内因性蛋白のリン酸化阻害作用の特異性にもとづくものであることが示唆された。
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