研究概要 |
プロテインホスファタ-ゼは蛋白性インヒビタ-により阻害されるタイプ1,されないタイプ2A,2B,2Cに分類される。この内2Aの活性調節機構はまだ明らかでない。我々はヒト赤血球細胞質可溶画分に2Aに属する基質特異性の異なるホスファタ-ゼI(Mr=180,000),III(Mr=177,000),IV(Mr=104,000)を見い出し、これらを均質に精製した。サブユニット構造はIがα_1β_1δ_1,IIIがα_1β_1γ_1,IVがα_1β_1と推定された。SDSーPAGEで算出した分子質量はαが34kDa,βが63kDa,γが53kDa,δが74kDaである。αが触媒サブユニットでβ,γ,δは調節サブユニットとして各酵素に固有の基質特異性,2価金属イオン要求性を与える。ホスファタ-ゼI,III,IVをMg^<2+>,ATP共存下に,サイクリックAMP依存性プロテインキナ-ゼ(Aーキナ-ゼ),Ca^<2+>リン脂質依存性プロテインキナ-ゼ(Cーキナ-ゼ),Ca^<2+>ーカルモジュリン依存性プロテインキナ-ゼII,ホスホリラ-ゼキナ-ゼ,ミオシン軽鎖キナ-ゼ,カゼインキナ-ゼIとそれぞれインキュベ-トすると,ホスファタ-ゼIのδサブユニットの特定のセリン残基のみが定量的にAーキナ-ゼとCーキナ-ゼによってリン酸化された。他のプロテインキナ-ゼはいづれのサブユニットもリン酸化しない。Aーキナ-ゼまたは、Cーキナ-ゼのホスファタ-ゼIに対するKm値は0.2〜0.3μMで赤血球内ホスファタ-ゼIの推定濃度とほぼ等しい。トリプシン消化リン酸化ペプチドの比較より、両酵素に共通のリン酸化部位とCーキナ-ゼに特有なリン酸化部位の存在が認められた。両酵素によりδサブユニットのリン酸化により、リン酸化H1ヒストンに対する脱リン酸化活性は20ー40%上昇した。一方、リン酸化ミオシン軽鎖に対する脱リン酸化活性はCーキナ-ゼによるリン酸化で50%促進を受け、Aーキナ-ゼのリン酸化で20%抑制された。異なるキナ-ゼによるδのリン酸が、異なる活性制御を行うことが示唆された。
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