研究概要 |
I.プロ型前駆体のプロセシングに関与するプロテア-ゼについて。 1)Furinのクロ-ニングと推定一次構造:ヒトおよびラット肝よりFurinのcDNAを単離しその塩基配列を決定した。Furinは794残基のアミノ酸で構成され,酵母のプロセシング酵素Kex2と高い相同性をもつ模結合性の糖蛋白質であることがわかった。 2)Furinの細胞内局在とプロセシング活性:Furin遺伝子をCOSー1細胞に発現させ,免疫電顕レベルで細胞内局在を検討した結果,Furinはゴルジ装置に局在することがわかった。アルブミンおよび補体成分C3の遺伝子を導入しFurinと同時に発現させると,両分泌蛋白質のプロ型前駆体はFurinによって完全の成熟型にプロセスされた。この変換活性はPittsburgh型α_1ーProtease inhibitor変異体によって特異的に抑制された。 3)以上の結果から,Furinはゴルジ装置に局在し,プロ型前駆体を成熟型に変換する酵素であることが強く示唆される。 II.形質膜蛋白質の生合成,プロセシングおよび細胞内輸送について。 1)GPIアンカ-型膜蛋白質:形質膜酵素であるAlkaline phosphatase(ALP)は,C末端に疎水性ペプチドをもつプロ型前駆体として合成させるが,小胞体で速やかにこの領域の切断とGlycosylーphosphatidylinositol(GPI)による置換が起り,安定した膜結合型になることを明らかにしたGPIの生合成を完全にブロックすると,ALPは前駆体のまま小胞体に長く滞るが,やがてC末端の疎水性ペプチドが切断され,分泌されるようになる。 2)小胞体内蛋白分解による酵素欠損:形質膜酵素であるDipeptidyl peptidase IV(DPPIV)を欠損するラットについて,その遺伝子ならびに蛋白質レベルの解析を行なった。欠損ラットでは,1塩基置換によりDPPIVの活性部位を構成する。Gly^<633>がArgに置換されており,その結果,合成された変異DPPIVは小胞体内で極めて速やかに分解されることがわかった。
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