研究概要 |
本研究は、肺胞II型細胞におけるリン脂質代謝調節へのサ-ファクタント・アポ蛋白、特にSPーAとSPーD関与の機構を解明することを目的として遂行された。研究成果の概要を以下に要約する。 1.SPーAによるホスファチジルコリン(PC)代謝調節機構 1)SPーAは、肺胞II型細胞の受容体に結合し、PC分泌を抑制する生物活性をもつ。SPーAの構造の中で、この活性発現に関与するのは、N端側にあるコラ-ゲン様構造領域であった。つまり、SPーAの高次構造の維持が機能発現に必須であることを明らかにした。 (2)SPーAは、リン脂質の中でジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)と特異的に強く結合することを構尸クロマト・リガンド法で見出した。DPPCを含むリポソ-ムが不飽和PCを含むリポソ-ムよりも、SPーAの存在下で、肺胞II型細胞より分離した形質膜に特異的に結合した。またDPPCを含むリポソ-ムは、SPーA存在下に肺胞II型細胞へ撰択的に取り込まれた。細胞内へ取り込まれたDPPCは、ラメラ封入体へ移送されるが,SPーAは形質膜へ残り、細胞へ取り込まれた後の両者の解離がみられた。以上,SPーAは肺胞II型細胞におけるDPPCの再利用を撰択的に促進することが本研究により示された。 2.DPーDによるリン脂質代謝調節機構 1)SPーDは、コラ-ゲン様構造及びC端側球伏頭部構造(C型レクチン構造)などSPーAと共通性をもつが,SPーAとは異なり肺洗淨液の上清画分から分離された。このnative SPーDは、リン脂質を結合しており、この結合リン酸質を介して,SPーAの受容体結合及び生物活性の発現を抑制していることが判明した。 2)SPーDは,薄尸クロマト・リガンド法で,ホスファチジルイノシト-ルとのみ結合した。この生理的意義の解明は今後の課題である。
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