研究概要 |
本研究は、肝内胆管系の各々のレベルでの複合糖質の発現異常の観点から、胆道系疾患の発生、進展を解明することが目的である。用いた方法は免疫組織化学とコラーゲンゲル内培養法である。1.ヒト肝内胆管系での血液型関連糖鎖発現の検討:A,B,H型物質は、正常の肝内の大型胆管系に分布したが、小型の胆管系での発現はなかった。I型糖鎖のルイスaとbは、正常と病的肝の肝内胆管系に広汎に分布していた。II型糖鎖のルイスXとYの発現は、正常肝では殆どなく、病的肝ではルイスYが高率に胆道系上皮に発現していた。免疫電顕で、これら糖鎖はゴルジ体と管腔面の微絨毛や細胞膜に発現し、これらの部位で糖タンパク質の成分になっていると考えられた。2.肝内胆管系の癌化に伴う複合糖質の変化:肝内結石症合併肝内胆管癌をモデルに検討を試みた。癌関連糖鎖抗原であるCA19-9,DUPAN II,CEAやA,B,H型物質やルイスa,b,X,Yは癌化部では、clonalに発現し、癌そのもののclonalityに対応する変化と考えられた。前癌病変部でも、これらの発現異常が見られたが、clonalityは明かではなかった。3.コラーゲンゲル内で培養した家兎胆道粘膜上皮は、一過性にin vivoでみられた糖鎖の発現や極性が消失した。しかし、培養12時間から上皮細胞内に微絨毛を持つ微小嚢胞が形成され、24時間で多細胞性の嚢胞の形成が見られた。この嚢胞の成熟に比例して、in vivoの家兎胆嚢粘膜にみられる種々の糖鎖が発現し、免疫電顕ではこれらの親和性はゴルジ体や細胞膜、微絨毛にみられ、細胞の極性の形成に糖鎖が重要な役割を演ずることが示唆された。4.今回の研究で、腫瘍性疾患で糖鎖の発現の違いが明かであったが、炎症性疾患に関しては疾患特異的な血液関連糖鎖の発現や増強、消失は軽度であった。今後、病的肝の胆道系上皮を区分別に分け、コラーゲンゲル内で培養し、胆道系の病態と複合糖質発現との関連性を検討する必要があると考えられた。
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