研究概要 |
今年度は、研究の総括とPCNAを用いた細胞増殖とオンコジン(N-myc)の腫瘍組織内同定に関して研究した。 [材料と方法]ラット新生仔硝子体腔内に10^8PFUのアデノウイルスを接種し、3時間後より経時的に眼球を摘出した。時間経過は、3,6,12,24,36,63時間ごとに検索した。組織を4%PFAで固定後、3μのパラフィン包埋切片を作成し、EIA遺伝子とヒトN-myc遺伝子をプローブとしてin situ hypridizationを行い、同時に抗p53モノクローナル抗体と抗PCNAモノクローナル抗体を用いABC法で免疫染色をした。 [結果と考察]アデノウイルスEIA遺伝子のmRNAはウイルス接種後3時間から同定することができ、その後持続的に発現していることが確認された。N-myc遺伝子のmRNAは、6時間後より反応は弱いが発現していた。免疫染色では、p53の発現は全てにおいて陰性であったが、PCNAの標識率は63時間の組織では急激に増加した。このウイルス誘発実験系では、かなり早朝からウイルス初期遺伝子の発現があり、それに誘導される癌関連遺伝子N-mycの発現が腫瘍化への重要な役割を担うことが示唆された。また、癌抑制遺伝子の一つp53はこの腫瘍発生には直接関与していないものと考えられた。
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