研究概要 |
ddYマウスは加齢によりメサンギウム増殖性糸球体腎炎を自然発症することからIgA腎症のモデルマウスと現在考えられている。 このddYマウスを用いて,血清中および糸球体溶出液中のIgAの電荷とサイズの分布を調べた。ddYの血中IgAレベルは正常マウスと比較すると40週以降,60週では有意に高いが,この60週ddYのプ-ル血清中のIgAの等電点はpH4.2から5.5と広がりがあり,弱齢ddYやBALB/cと有意差が無かったのに対し,糸球体溶出液中のIgAは4.2から4.8とアニオニックな性状を示した。HPLCにより,16週・40週・60週ddYのプ-ル血清および糸球体溶出液中のIgAの分子量(サイズ)の解析をおこなったところ,加齢により2量体IgAや多量体IgAが著明に増加していた。しかし血清中には単量体IgAのピ-クが週令によらずみられるのに対し溶出液中にはほとんどみられなかった。さらに高度の糸球体腎炎を呈している老齢ddYマウスの血清中には80%以上もの2量体・多量体が認められた(腎炎の軽度のものでは64%)。糸球体からの溶出条件を酸性と中性で行い,その溶出液のHPLC分画を比較した結果,酸性条件下では多量体が減少していた。 これらの結果から,多クロ-ンの広がりのあるIgAの中から酸性よりのIgAを選択して糸球体メサンギウムに蓄積する機構が存在し,メサンギウム増殖性糸球体腎炎の進展には多量体IgAが病因的役割をはたしていることが示唆される。
|