研究概要 |
(1)HTLVーIのヒト中枢神経系に対する感染性の検討:ヒト神経系腫瘍の初代培養細胞及び各種神経系腫瘍培養細胞株に対するHTLVーIの感染性を,X線照射したHTLVーI産生MTー2細胞との混合培養法によって検索した。 方法)検索細胞は正常小脳細胞,脳腫瘍細胞(星膠腫,髄芽腫,髄膜腫,血管芽腫,神経鞘腫),各種培養細胞株(星膠種,上衣腫,稀突起膠腫,髄芽腫,神経芽腫)であり,HTLVーI p19,p24,pX産物に対する単クロ-ン抗体で免疫組織学的にHTLVーIの感染の有無を確かめた。また一部の細胞ではin situ hybridization法,reverse transcriptase assay,PCR法を併用した。 結果)全ての培養株細胞及び正常小脳並びに脳腫瘍の初代培養細胞はHTLVーI感染に感受性を示した。2重染色法によりglial fibrillary acidic protein,Sー100蛋白あるいはvimentinが陽性である細胞に感染した。髄芽腫においてはneurofilamentあるいはneuron specific enolaseが陽性である細胞も感受性を示した。reverse transcriptase assayでU251ーMG(星膠腫)及びKGー1C(稀突起膠腫)へのウイルス産生性の感染が証明された。混合培養したU251ーMG細胞は合胞性多核巨細胞を形成するが、この細胞及びp19陽性の単核細胞からPCR法によりHTLVーIゲノムが証明された。HTLVーIウイルスRNAはまたin situ hybridizationにより感染U251ーMGに検出された。これらのデ-タからHTLVーIはヒト神経系組織において幅広い感染性を有することが判明した。 (2)ラット小脳培養におけるHTLVーIの感染性及び脱髄効果の検討:定常的な髄鞘形成に成功せず計画年度中には成果が得られなかった。
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