研究概要 |
Trypanosoma b.gambiense(Tg)の血流型(BF)の培養系ヘマンノ-スを添加すると,増殖が阻害される。支持細胞を用いた培養系においてこの現象を発見した。Tgの代謝の研究のために支持細胞を用いない培養系としてMEMとLー15を等量混合し,10%の牛胎仔血清を添加した培養液が適格であることを見出した。マンノ-スの作用機序を知るためにBFによるその取り込みを測定をする時,グルコ-スがマンノ-スと競合すると提言されているので.グルコ-スを除いて ^<14>Cーマンノ-スを添加し,その取り込みを測定すべきだが,グルコ-スはBFのエネルギ-源なのでこの問題を解決する必要があった。グルコ-スを除いたア-ル液中でBFを37Cでインキュベ-トすると,30分以内に動かなくなるけれども,動きが鈍化した時点で糖やグリセロ-ルを添加すると運動が回復することが判明した。グリセロ-ルはグリコ-スと同程度に回復させるがマンノ-スは劣る。ガラクト-スは無効であった。T.b.brucei(Tb)ではガラクト-スの解糖系での代謝が報告されているがそれと合致しない。 ^<14>Cーマンノ-スの取り込みを計測するにあたって,BFを捕捉する濾紙にはADVANTEC社GB140が最適と判明した。グリセロ-ルはエネルギ-源となり, ^<14>Cーマンノ-スの取り込みに影響しないことが明らかになった。グルコ-ス添加でその取り込みを抑えるには, ^<14>Cーマンノ-スに対して高濃度を要し,500倍で50%抑制された。Tbを用いた結果では等濃度あればよいはずである。このことからもTgはTbから派生した亜種であるけれども生理的にはかなり異なることが推察される。更に解糖系中間代謝産物のフルクト-ス1,6ービス燐酸がマンノ-スよりはるかに低い濃度でBFを障害するという画期的成果が得られた。生活史上プロサイクリックに対しての障害は認められなかった。電顕での観察によるとマンノ-ス添加2時間目にすでに細胞質に変化が現れグライコソ-ムが変質していた。
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