研究概要 |
1)Zymolyaseに対するニュ-モシスチス・カリニ嚢子の細胞壁感受性とその抗原性:Zymolyaseがin vitroにおいて嚢子壁を溶解することを光学ならびに電子顕微鏡を用いて明らかにした。このことはβ(1,3)glucanが嚢子壁の主要構成多糖であることを示す。さらにZymolyaseにより嚢子壁を溶解された嚢子は110KDの嚢子表面抗原に対するモノクロ-ナル抗体と反応しなかったがZymolyase処理嚢子浮遊液の遠心上清をWestern blot法で調べたところ,この表面抗原が検出された。2)ニュ-モシスチス・カリニ肺炎に対するグルカン合成阻害薬,アクレアシンAの治療効果:ラットに免疫抑制剤を5週間投与した後,β(1,3)glucan合成阻害薬であるアクレアシンA2,10,25mg/kgをラットの腹腔内に毎日2週間投与したところ,10mg/kg投与群では著しく嚢子数を減少させ,2mg/kg投与群でさえ嚢子数の増加は認められなかった。又病理組織学的にはほとんど正常か,例外的にみられたにすぎなかった。3)アクレアシンAによるニュ-モシスチス・カリニ肺炎の予防:免疫抑制剤投与開始時よりアクレアシンA(2mgあるいは10mg/kg)を連日腹腔内に投与したところ,Pc嚢子陽性ラットは対照群では92.9%(13/14)であったが,10mg/kg投与群においては0%(0/12),2mg/kg投与群においても20.0%(3/15)であった。嚢子数も対照群で平均610であるのに,10mg/kg投与群では0,2mg/kg投与群では2であり,著しい予防効果を認めた。4)アクレアシンAとST合剤併用による治療効果:免疫抑制剤投与開始5週を経えた時点より2週間アクレアシンA(0.4あるいは2.0mg/kg)およびST合剤(Sulfamethoxazoleとして0.2,1.0,5.0,25あるいは125mg/kg,経口)を各々単独あるいは両者を併用したところ,アクレアシンA2.0mg/kg,ST合剤(Sulfamethoxazoleとして5mg/kg以上)単独で著効を示した。さらにアクレアシンA0.4mg/kgおよびST合剤(sulfamethaxazoleとして1.0mg/kg)の併用でも著効を示した。
|