研究概要 |
緑膿菌外膜で透過孔を形成する蛋白質(ポ-リン)であるprotein D2の分子集合機構を明かにする目的で研究を行った。protein D2は外膜で三量展構造をとり、この三量体はSDSにより単量体に解離する事、そしてSDSを希釈すると単量体は全て再会合して三量体となり、元の蛋白質と同じ透過活性を示す事を明らかにした。この単量体から三量体へのassemblyの過程を明らかにするために、まずprotein D2 三量体及び単量体の構造安定性を調べた。塩酸グアニジン(GuHC1)によるprotein D2の変性を蛍光光度計を用いて調べた。protein D2三量体の変性は4M GuHClで始まり、5MGuHC1 でほぼ完了した。そして変性したprotein D2は,GuHClの濃度をさげても元に戻らない不可逆変性を示した。単週体も、三量体とほぼ同様の変性を示した。次に、この変性のキネティクスを調べた。5M GuHC1 溶液に protein D2を加えた後、蛍光の減少を、時間を追って測定した。その結果、protein D2にニ相性の変性曲線が認められた。これは、この蛋白質が二っ以上のドメインからなる構造をもつ事を示唆する。そこでProtein D2のドメイン構造の存在を確かめるために、トリプシンによる蛋白限定分解を試みた。蛋白分解物を解析した結果、二つのmajorな蛋白バンド(Mr,27kDa及び19kDaに相当)が認められた。ところが立体構造を壊した蛋白質をトリプシン分解したところ、protein D2は完全に分解された。これは蛋白質の中でこの部位がドメイン構造をとっている事を示す。更にトリプシン濃度を上げて処理すると、19kDa蛋白は更に13及び6kDaに分解された。これらの結果は、protein D2は27及びkDaドメインからなり、19kDaドメインは更に13及び6kDaのサブドメインからなる構造をもつ事を示している。今後protein D2の分子集合及び機能発現において、それぞれのドメインがどの様な役割を果たしているのかを明らかにしたい。
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