補体第二経路は、抗体などの介在なしにも活性化反応を起こし得る。侵入異物である細菌などの固層膜上に存在するアミノ基や水酸基にC3のチオエステル基部分が反応することにより補体反応が始動する仕掛けとなっている。しかし、自己細胞には、同種の補体反応を特異的に抑制する膜分子が存在するため、補体反応は異物に対する反応のみが許されるので、自己非自己の識別が、抗体等を介在しなくても出来る。このような役割を担う分子の一つとして発見したHRF20(20kDa homologous restriction factor)は、同種補体の最終ステップの膜障害反応を抑制する。 このHRF20について以下の研究結果を得た。 (1)HRF20をリポソ-ム膜に組み込み、同時にTNPーCapーDPPE(Trinitrophenolーcaproylーdipalmitoylphosphatidyl ethanolamine)も組み込んだリポソ-ムを作成した。これにantiーTNP抗体を作用させ、補体反応が起こり易いようにしておき、これを各種動物の血清と反応させた。各種動物血清によるリポソ-ムの溶解反応を指標にして、HRF20の有無の効果を検討した結果、ヒト血清補体は強力に抑制されるが、ウサギ、モルモット、ラット、マウス等の血清補体に対しては、ほとんど抑制を示さなかった。サル血清に対しては、ヒトにくらべると少し弱かったが、明らかな抑制が認められヒトとの交叉抑制性があった。これに対し、ウズラ血清補体によるリポソ-ム溶解反応は、ヒト血清に劣らず強力に抑制された。ヒトと離れた種であるが、その同種認識システムがたまたま一致していたのだと考えた。 (2)CHO細胞にHRF20cDNAをtransfectしてHRF20を発現させたとき、ラットやモルモットの補体は抑制しないがヒトの補体は抑制した。このことから、種特異性を決めているのはペプチド構造であることが推察された。しかし、糖鎖の役割を必ずしも否定するものではないと考えられる。
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