研究概要 |
希土類元素は種々の機能性材料に用いられるようになり需要が急増しているが、その生体への作用は殆ど知られていない。そこでこれら元素の生体影響を観る第一段階として、実験動物に投与した希土類元素の生体内挙動を観察した。まず、生体試料中の希土類元素の定量法を確立し、次いでマウスに希土類元素化合物〔イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユ-ロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)〕を投与して投与元素の臓器分布を調べた。また希土類元素投与が体内常在元素濃度に及ぼす影響を検討した。 1.臓器は湿式灰化の後測定に供した。2,6ーピリジンジカルボン酸をキレ-ト剤としたEu、Tb、Dyの蛍光測定条件を確立した(検出限界はEu1、Tb1、Dy5ng/ml)。 2.臓器の灰化液をイオンクロマトによる分離後、アルセナゾIII溶液を用いたポストカラム法による定量は12種の希土類元素全てに適用できた(検出限界2.5ng元素)。このうちEu、Tb、Dyについては反応液として2,6ーピリジンジカルボン酸溶液を用いることにより検出感度を2〜20倍向上することが出来た。 3.マウスに静脈内投与(25mg元素/kg)した希土類元素は、投与の20時間後において脾臓、肝臓、肺に高濃度に分布した。Eu、Tb、Dyの10mg/kg投与、およびこれらの混合物(各10mg/kg、Total30mg/kg)投与では、いずれの場合も投与元素が脾臓、肝臓、肺に分布する点で一致したが、混合物投与では肺への分布割合が単独の場合に比べて非常に高かった。 4.生体内常在元素のうちCa濃度の特異的な増加が起こることを見いだした。これは用いたいずれの元素でも認められ、投与元素が高濃度に分布した臓器のCa濃度が対照群に比べて著しく高かった。しかしMg、Zn、Fe、P濃度については特に変動は認められなかった。 5.臓器中の投与元素濃度およびCa濃度増加の程度は、希土類元素の種類により異なっていたが、元素番号(原子量)やイオン半径との相関性は特に認められなかった。 現在臓器中の希土類元素結合蛋白の検索、元素の投与により増加したCaの形態について検討を行っている。
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