研究概要 |
N-hexaneの最終代謝産物の一つである2,5-Hexianedion(2,5-HD)は末梢神経に対して強い傷害作用がある。その特異的な初期変化は神経軸索遠位部におけるランビエ絞輪近位側にNeurofilament(NF)の蓄積を伴うに膨隆として良く知られている。このとき軸索内でのNFの輸送に変化が起こっていることが分かっている。ラット胎仔期の末梢神経は髄鞘がまだ形成されていず、また軸索もまだ伸長を続けている状態にあるので、これを対象とすれば発生期の軸索伸張に対する作用、ミエリン鞘がないための軸索への直接的作用、および胎仔期における2,5-HDに対する感受性等を検討することができる。そこで我々は妊娠ラットを3群設定し、高濃度曝露群(H)には妊娠12-16日2,5-HDを680mg/Kg、中濃度曝露群(L)には妊娠12-19日2,5-HDを340mg/Kg毎日曝露し、その胎仔の末梢神経系を電子顕微鏡を用いて形態学的および形態計量学的に観察するとともに曝露胎仔の出生後の成長を観察することとした。 形態学的研究により2,5-HDは胎児坐骨神経本幹の軸索に特徴的な変性所見、即ち軸索相互の融合を引き起こすこと、又それには用量反応関係があることを示すことが出来た。腓骨神経ではH群で軸索髄鞘化の遅延を認め小径線維の残存を認めた。軸索径分布の解析ではH群で軸索径の拡大が認められ、これは軸索流の機能変化を示唆してる。曝露胎児を自然分娩させその後の成長過程を観察した。その結果、曝露により着床数・産仔数に変化はなく奇形等の出現増も認められなかった。また発育を体重変化でみると、胎仔期より体重増加は抑制されていたが出生後も抑制がそのまま持続し追い付き現象は認められなかった。末梢神経機能は、生後のある時期までは麻痺が存在していたと考えられるが生後50日には回復しいた。自発運動量には影響はなかった。
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