研究概要 |
夜勤交代性勤務時の血圧変動は,高血圧群と正常血圧群とで同一であるか,ストレス負荷時の循環器系の反応とその日内変動が,両者でどのように異なっているかを明らかにしようとした。実際の作業条件下で24時間の血圧変動(昼勤,夜勤)を比較したところ,高血圧(境界域)群では夜勤時の午前0時から4時の間における特徴的な血圧の低下がみられ,正常血圧群とは血圧変動のパターンが異なる可能性が明らかとなった。次に,実験室内にて各種条件をコントロールした上で,ストレス負荷(暗算,顔面冷却,head-up tilt)時の循環器系の反応性の日内変動(午前9時,午後9時,午前3時)について高血圧群と正常血圧群との差異を比較検討した。暗算,顔面冷却testでは,高血圧群と正常血圧群との間には大きな差異はみとめられなかった。午前3時のHead-up tilt時に,高血圧群で血圧が低下する一貫した傾向がみられ,収縮期血圧は90°拡張期血圧は20°で正常血圧群との間に有意(p<0.05)な差がみられた。このとき心拍出量の変化には両者で差が見られないことから,高血圧群での血圧の低下は,心拍出量の減少等ではなく,末梢血管抵抗の上昇が起こりにくいことに起因する可能性が考えられた。以上,2つの研究より,深夜勤務時には高血圧群の血圧は低下を示すことがあり,それは末梢血管抵抗の上昇などの血圧調整機能の低下によることが推測された。
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