研究概要 |
脳血管障害死亡の中で,脳出血訂正死亡率は全ブロックで急速に死亡率が低下したために,地域格差も小さくなってきている。特に地域ブロック間の推移の特徴は,1960年代後半に東地が1位であったブロック順位が,1981年以降に関東IIブロックが上廻っている。北海道が上位群から下位群に移行してきたなどの地域間順位に多くの変動が生じていることが分った。脳硬塞は,1968年から1985年の間の高率ブロックは東北,関東II,北陸であった。下位ブロックには近畿I,南九州が属し,比較的順位変動が少ないまま漸減の傾向を示していた。 国民栄養調査成績の摂取栄養量と脳出血にみられる関係は,エネルギ-,植物性蛋白質,Ca,食塩,ビタミンB_1と危険率1%の高い正相関をみた。脳硬塞では,脳出血の項目の他に炭水化物,ビタミンB_2で有意に高い順相関を認めた。摂取栄養量の地域ブロック間の値と脳出血訂正死亡率の地域相関係数の間には,特に大きな年次変化は認められなかった。各年次共に,植物性蛋白質,カルシウム,食塩,ビタミンB_1と死亡率とが正の有意な相関であった。脳硬塞でも,相関係数に大きな変化はなかったが,総脂肪摂取量の相関係数が1982年から負移行しており,その主体は動物性脂肪摂取量の増加が主因になっていることが分った。 微量金属摂取量の推計では,Ca摂取量は,増加の傾向から1983年を境に減少しはじめている。Mg摂取量は1971年をピ-クにして漸減した結果Ca/Mg比は1983年,1984年に最高値を示した。Mg摂取量は,東日本と西日本に有意な差があり,東日本に高くなっている。Mg摂取量の減少傾向は脳出血,脳硬塞訂正死亡率の低下と同方向性ではあるが,摂取栄養と死亡の時間的ずれを考慮した時系列と地域性との分析方法を更に進めてみる必要性が高い。早急な結論を求めずに分析方法の変換を含めて解析を更に進めたい。
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