研究概要 |
Wistar系ラット雌雄を用い,KC1およびSCC静注による心機能不全型(CFT)および呼吸機能不全型(RFT)急死に対する下垂体の応答性を検討した.それにはラジオイムノアッセイによって測定された死後の下垂体と死戦期における血液循環の免疫活性β-エンドルフィン(IR-β-EP)の変化を調べた.CFTとRFTでその体重比が有意に異なる雌雄の下垂体においてIR-β-EP量はCFTよりRFTで有意に少なかった.血漿IR-β-EPはCFTの短い死戦期では変化を示さなかったが,RFTの死戦期では顕著に増加した.雄においてはSCC投与2分ないし4分後に最高となり投与前の約3倍量であった.だが雌での上昇は雄よりも低かった.RFTの死戦期における血漿IR-β-EPの増量はデキサメサゾン処置により下垂体由来のものとみなされた.従って,下垂体はCFTよりもRFT急死においてその致命的苦痛に対しより多く応答することが判明した. 同系統のラットでβ-エンドルフィン(β-EP)の呼吸・心血管系に対する作用の性差を調べた.正常な雌雄ラットにβ-EPを脳室内投与(0.18mg/kg)した場合,呼吸数(RR),心拍数(HR)および平均動脈圧(MABP)は有意に低下し,呼気CO_2は有意に増加した.これらの抑制作用はナロキソンの静注投与(0.2mg/kg)によって一時的に阻止された.発情期と発情休止期の雌では,β-EPの作用に差がなかった.RR,HR,MABPにおいて,その作用は雄より雌で有意に強く現われた.精巣除去のラットはその抑制作用が無処置な雌と同程度であった.しかし卵巣除去のラットでは無処置な雌とその作用に違いは認められなかった.Testosteroneで処置された精巣除去や卵巣除去のラットにおいて,前者は無処置の雄と同じ結果を示したが,後者はそうではなかった.よって雄ラットではβ-EPの呼吸・心血管系への抑制作用はアンドロゲンにより著しく緩和されることが判明した.
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