研究概要 |
基礎的検討:1虚血性急性腎不全におけるエンドセリンの関与についてラットを用いて検討した。両側腎動脈虚血において,45分間の虚血により急性腎不全後の腎障害が持続した。血漿エンドセリン濃度は2日目にピ-クを示し後,除々に低下した。腎組織中エンドセリン含有量も2日目にピ-クを示した。腎のどの部位よりどのような機序により産生が生じるのかについて検討したところ正常腎においては,髄質尿細管浮遊液での成績では,胎児ウシ血清および細胞障時に出現すると考えられるTGFーβの存在下にエンドセリン産生の増加がみられた。これらのことこら,急性腎不全の腎障害時には,TGFーβのような炎症性物質により腎髄質でのエンドセリン産生が増加している可能性が示唆された。 2.急性腎不全のさいに増加するエンドセリンの体液調節に与える影響について検討した。エンドセリンは,抗利尿ホルモン作用のsecond messengerであるcAMP産生に抑制することがわかった。さらにこのことを証明するために,皮質集尿細管,髄質集合尿細管において作用させたところエンドセリンは,両部位において,水,Naの再吸収を抑制することがわかった。従ってエンドセリンは急性腎不全時に増加し,血管収縮作用とともに,GFRの低下により貯留した体液を援衝すべくNa利尿時に尿細管に作用している可能性が示された。 臨床的検討:急性腎不全時の血漿エンドセリン濃度を検討した。急性期では血漿エンドセリンは高値を示し回復とともに低下した。エンドセリン濃度の上昇の直後に腎機能が増悪した例もあり,腎機能の低下にエンドセリンが関与している可能性が示唆された。
|