研究概要 |
長期の透析患者に合併するアミロイドーシスは,透析治療上の重大な問題となっている。本研究では,透析アミロイドーシスについての臨床病理学的検討を行った。同時に,アミロイド前駆蛋白であるβ_2ーミクログロブリン(β_2ーM)のアミロイド形成に関する生化学的検討により,以下の成果を得た。 1、アミロイド沈着組織の電子線マイクロアナライザ-による分析・骨や滑膜のアミロイド組織のカラ-マッピング法(島津EPMA8705)による元素分析を行ったところ,Al,Fe,S,O,N,Pなどの元素はアミロイド部位に集積をみなかったが,Ca元素はアミロイドと密接に共在することが明らかになった。すなわち,本症のアミロイド形成にCa元素が大きな役割を持つことが分った。 2、 ^<125>Iーβ_2ーMによるin vitroの実験:アミロイド前駆蛋白であるβ_2ーMを腎不全患者尿より抽出した。約8lの尿をカットオフ40,000の膜フィルタ-で濾過したのち,カットオフ5,000の膜フィルタ-で濃縮したのち,ゲル濾過とイオン交換クロマトHPLCによりβ_2ーMを純化した。次に, ^<125>IをクロラミンT法により標識し, ^<125>Iーβ_2ーMを作成した。手術時に採取した患者アミロイド組織を,水抽出法でアミロイド線維まで精製し, ^<125>Iーβ_2ーMとのin vitroの反応を検討した。その結果,in vitroでの ^<125>Iーβ_2ーMのアミロイド線維への取り込みはみられなかった。Caイオン濃度を高くしてもこの両者の反応に変化はみられなかった。この成績から,β_2ーMのアミロイド形成には,細胞を含めた他の末知の因子の関与が示唆された。 3、アミロイド骨病変のレ線学的検討:長期透析患者747名の骨アミロイド病変をレ線像で分析した。骨病変は透析期間の長期化に一致して強くなることが認められた。無症状の骨病変も26〜17%にみとめられた。 以上,本研究によりβ_2ーMのアミロイドの病態についての知見を得た。
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