自己免疫性甲状腺疾患患者の末梢血からリンパ球分画を比重遠心法で分離し、蛍光標識モノクローナル抗体とセル・ソーターを用いてCD5^+Bリンパ球とCD5^-Bリンパ球を95%以上の純度で分離した。そしてそれぞれのBリンパ球分画に放射線照射した同一人のリンパ球をFeeder cellとして添加して、BおよびTリンパ球マイトジエンの併用刺激で7日間培養した。培養後、両Bリンパ球サブセット中のサイログロブリン抗体および甲状腺ペルオキシダーゼ抗体産生細胞の有無をELISPOT法で検出した。その結果、予想に反して、IgG型の甲状腺自己抗体は、CD5^-Bリンパ球のみから産生されることが判明した。一方IgM型の甲状腺自己抗体は、CD5^-Bリンパ球とCD5^+Bリンパ球の両者から産生されていた。しかし、凍結保存しておいた培養上清を用いて、培養上清中のTSHレセプター抗体の生物活性をラットの甲状腺細胞株(FRTL-5 cell line)を用いて測定したが、すべて測定感度以下であり、どちらのBリンパ球サブセットから産生されるかを明らかにできなかった。さらに、実験用マウス(C57BL/6J)に甲状腺ホルモンまたは抗甲状腺剤を1〜6か月間投与して甲状腺機能亢進および低下のマウスを作製し、甲状腺ホルモンがCD5^+Bリンパ球およびCD5^-Bリンパ球に及ぼす影響を調べた。しかし甲状腺機能亢進マウスでは、脾臓のCD5^+Bリンパ球は、未治療バセドウ病でみられたような著増は示さず、逆に一過性の低下を示した。ところが、脾臓のNK細胞は、甲状腺ホルモン投与後1か月目からすでに増加し、Tリンパ球も6か月間の長期投与により増加を示した。従って、バセドウ病でみられるCD5^+Bリンパ球の著増は、甲状腺ホルモン過剰によるものではなく、バセドウ病の病因と関係する可能性が強く示唆された。一方、甲状腺機能低下マウスではCD5^-細胞が増加した。
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