研究概要 |
原発性胆汁性肝硬変(PBC)の病態を解明する目的で,胸腺摘出マウスを用いて動物実験モデルを作成しその発症機序を解明することを試みた。生後3日目に胸腺を摘出したマウスに種々の胆管抗原を免疫したところ、胆管上皮細胞を免疫した群においてのみ高率に胆管病変を作成することができた。胆管病変はリンパ球,マクロファージ、形質細胞を中心とした細胞浸潤と胆管上皮細胞の変性からなっていた。浸潤リンパ球はCD4陽性細胞及びCD8陽性細胞からなり、CD4陽性細胞が多い傾向にあった。胆管上皮細胞にはHLA classI,II抗原が表出されていた。また胆管周囲に巨細胞も出現していた。これらの所見はヒトのPBCと類似する所見であった。さらにこれらのマウスの血清を調べたところ、PBCに特有である抗ミトコンドリア抗体(AMA)が出現しており、また免疫した胆管抗原の88,76,37,30,21KDの蛋白に対し抗体が出現していた。AMAはヒトPBCに出現するAMAと同様にPyruvate dehydrogenaseに対する抗体であった。 以上の実験結果から本モデルはPBCの動物実験モデルとして使用できるものと考えられ、さらに検討を継続中である。今後標的となる胆管抗原の同定、進行性の病変の作成、種々の病変を抑制するための薬剤効果などの検討が必要である。
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