| 研究概要 |
小腸および大腸アニサキス症は,胃アニサキス症に比して診断が困難であり,無用な開腹を受ける症例が少なくない.急性消化管アニサキス症の臨床において血清生化学的な確実な補助診断法の開発が望まれる.本研究は,アニサキス特異的蛋白に対するモノクロ-ナル抗体を作製し,蛋白の大量収集を行い,診断に有用な免疫測定系を完成させることを目的とする.現在まで,特異的モノクロ-ナル抗体産生のハイブリド-マの作製と選別作業が続けられているが,目的とする特異的モノクロ-ナル抗体は得られていない.
1.アニサキス76k,64k,60k蛋白に対するモノクロ-ナル抗体の作製:
(1)1週間隔でマウス(n=8)を開腹し生きたアニサキス虫体を腹腔中にimplantした.4〜6週後に採血し,ELISA法にて血中抗体を測定したところ,全てのマウスにアニサキス抗体の上昇を確認した.次いでマウス脾細胞とミエロ-マ細胞P3U1を細胞融合させて,ハイブリド-マを作製した.
(2)得られたハイブリド-マの中から,アニサキス粗抗原を固相化したELISA法にて選別し,アニサキス抗原に対する抗体産生の多いクロ-ン20個を得た.
(3)現在,これらの中からImmuneblotting法によりアニサキス特異的76,64,60k蛋白に対する抗体産生のハイブリド-マを確認中である.
B.血中アニサキス抗体に関する新しい知見:
(1)本研究に関する新しい知見として,急性小腸アニサキス症,大腸アニサキス症においても76k,64k,60k蛋白に対する血中抗体反応が認められ,発症後より抗体価は急激に増加し14ケ月高値持続した.従ってこれらの変動を捉えれば,小腸および大腸アニサキス症の確実な診断が可能と考えられた.
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