研究概要 |
Denkらの方法に従い,C3HマウスKグリセオフルビンを投与し,マロリ-体(MB)を作製し,摘出した肝をdetergent処理し,透過電顕,走査電顕で観察すると共に,抗サイトケラチン抗体(マウスサイトケラチン抗体:CK55,CK44およびヒトサイトケラチン抗体:AE3,EAB903)とポリクロ-ナルな抗ユビキチン(Ub)抗体を用いて検討した。 MBを形成した肝細胞では中間径フィラメント(1F)のdisorganizationが見られたが,MBが形成されても1Fは存在していた。MBはCK55で染色されるが,肝細胞の1Fはモザイク状に染色される場合と全く染色されない場合があった(蛍光抗体法)。AE3,EAB903はMBのみを染色した。CK44ではMB,細胞質ともK染色される肝細胞が存在した。CK55とUbの2重染色ではMBは両者で染色され,CK55で反応する細胞質ではUbの反応があり,CK55の反応がなければUbの反応もなかった。 免疫電顕では,MBの形成された肝細胞でも1Fは存在していたが,CK55が全くラベルされない1Fが存在していた。MBにはCK55,Ubともにラベルされた。UbはCK55陽性の1Fには強い反応を示したが,CK55陰性の1Fにはラベルされなかった。 〈結論〉 MB形成過程において1Fのdisorgoni tionが出現する。そして,その過程でCK染色陰性のいわゆるempty ellがみられるが,これは1Fが消失したものではなく,1Fの表現型の変化に起因するものである。 この変化はMB形成の原因となりうるもので,正常の表現型を示す1Fの分解にはUbの関与が示唆される。Ubを介する蛋白分解系の異常がMB形成の原因の1つと思われる。
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