研究概要 |
ストレス潰瘍に代表されるストレス病は,生体のホメオスタ-シスの維持機構が破綻することによって発症する。ストレスが加わると,脳神経系,内分泌系,免疫系の精巧な調節によって保たれている生体のホメオスタ-シスが乱され,胃粘膜障害の発生へとつながる。そこで実験としては,ストレスを負荷したマウスを用いて,胃粘膜障害の形態的変化と神経,内分泌,免疫系の各種パラメ-タ-を総合的にとらえ,ストレス潰瘍の発症機序の解明を試みた。ストレスとしては,社会,心理的要素の強い食餌制限ストレスをマウスに負荷してストレス潰瘍を作成し,経時的にulcerを計算した。肉眼的な胃粘膜病変は,食餌制限2日目より認められるようになりulcer indexも次第に増大した。食餌制限ストレスに伴う血中カテコラミンの動向は,絶食2日目,4日目のノルアドレナリンが,正常対照群より有意に上昇したが,アドレナリン,ド-パミンに関しては,有意差が認められなかった。免疫系のパラメ-タ-であるNK活性に関しては,絶食2日目で有意に上昇していた。また一方,ストレス誘因の胃粘膜障害機序として,活性酸素種を中心としたフリ-ラジカルの関与が注目されている。そこで食餌制限ストレスを負荷したマウスを用いて,胃粘膜の活性酸素消去系酵素を測定したが,SOD活性のみにその影響が認められた。すなわち胃粘膜SOD活性は,ストレスの進行に伴って有意な低下を示した。また腹腔マクロファ-ジからのPMA刺激によるO_2^ー産生は,ストレスの経過と共に上昇を示し,これらが急性胃粘膜障害の発症と関係しているものと推定された。
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