研究分担者 |
佐伯 日出貴 東邦大学, 医学部, 助手
佐藤 隆 東邦大学, 医学部, 助手
山室 渡 東邦大学, 医学部, 助手 (80166777)
伊藤 金次 東邦大学, 医学部, 講師 (40057758)
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研究概要 |
1.ヒト肝悪性腫瘍と腫瘍類似病変のglutathione S-transferase(GST)α,πにつき免疫組織化学的に検討した。肝細胞癌28病変ではαは60%に陽性を示し,高分化例で陽性率が高かったが、πは陰性であった。胆管細胞癌10例ではαは陰性であったが,πは80%に陽性を示した。Focal nodular hyperplasia2例,adenomatous hyperplasia(AH)5例,liver cell dysplasia4例では,αは全病変に陽性で,πはAHの一部にのみ陽性を示した。πが胆管細胞癌の免疫組織化学的マーカーになる得ること,AHを前癌病変として位置づけ得ることが示唆された。 2.ラット初代培養肝細胞のGST活性とサブユニットの変化を検討した。GST活性は培養開始から48時間後に一旦低下,次第に上昇し,120時間後には12時間後のレベルに復した。免疫細胞化学的検討は抗Ya,抗Yb_1,抗Ypの3種類の抗体を用いて行った。Yaは144時間後まで一貫して陽性で,Yb_1は24時間後陽性,以後漸次陽性度の低下を認めたが,Ypは48時間後は陰性,96時間後には明らかな陽性を認めた。培養肝細胞の経時的GST活性の上昇はYpの増加によると考えられた。 3.肝化学発癌過程におけるGST-P(πクラス,Ypサブユニット)発現の意義を知るため,ラットにdiethylnitrosamineを継続投与した群(A群)と4週投与後8週離脱した群(B群)のGST-Pを免疫組織化学的に検討した。A群では4日目からGST-P陽性細胞が出現,次第にminifoci,large foci,6週目から過形成性結節となり,10週目から癌結節が出現,癌結節ではGST-P陽性度は低下した。B群ではGST-P陽性large fociは次第にminifoci,single cellとなり,過形成性結節は減少,離脱8週目には認められなくなった。GST-P陽性細胞には発癌initiatorの離脱により,可逆的な転帰をとるものがあることが示唆された。
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