研究概要 |
モルモット胃単離粘液細胞培養系を確立し、細胞レベルでの粘液新合成を生化学的に検討することが可能であった。gastrin,carbachol投与により粘液合成の有意な増加を認めたが、histamineでは認められなかった。indomethacin(IND)前投与によりprostaglandinを抑制した状態でgastrinを投与すると有意な粘液合成増加が見られたが、培養液中へのprostaglandin E_2(PG)放出は変化しておらず、gastrinの粘液増加作用はPGを介さずにgastrinの直接作用が示唆された。一方、carbachol投与では粘液合成増加が認められ、培養液中へのPG放出も増加していたが、IND前投与により粘液合成は増加せず、carbacholの粘液合成増加作用の一部はPGを介して行なわれている可能性が示唆された。酸分泌刺激物質投与後の細胞内cAMP濃度には 有意な変化はなく、Ca-ionophore投与により粘液合成増加がみられたことから、gastrin,histamineの粘液増加作用にはcAMPよりはCa^<++>が関与している可能性が示唆された。 epidermal growth factor(EGF)投与では粘液合成及びPG放出を有意に増加させていた。しかしIND前投与してPGを抑制してからEGFを投与すると、PG放出は著明に減少しているにもかかわらず、粘液合成は有意に増加しており、EGFによる粘液合成増加作用にはPGも一部関与している可能性はあるが、EGF自体にも粘液合成を促進させる作用があると推察された。これらの物質により増加した粘液組成に関する報告はなされていない。粘液糖蛋白質糖鎖末端と特異的に結合するレクチンを用いたプレートアッセイを施行したところ、対照群と比較して有意な差は認められなかった。このことから酸分泌刺激物質やEGFは粘液合成を増加させても、粘液の糖鎖構造には影響を及ぼさないものと考えられた。このように、強力な攻撃因子である酸の分泌を刺激する物質が、同時に粘液合成をも促進し、胃粘膜防御機構の一端を担っていることが 示唆された。
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