研究概要 |
大気管培養上皮細胞を用い、パッチクランプ法およびウッシング法を用い、それぞれ細胞の電気的特性(短絡電流,細胞間電位差,コンダクタンス)と単一イオンチャンネル電流を測定し得た。 パッチクランプでは,wholeーcell法とInsideーout法により、粘膜側のClチャンネル電流の他、コンダクタンスが約45pSの陽イオンチャンネル(非選択性)と、よりコンダクタンスの低いKチャンネルの存在を同定した。上記のKチャンネルの生理学的意義は不明であるが、本チャンネルの活性化は細胞の過分極を惹起せしめ,これは粘膜側のClチャンネルの開口現象を維持するための電気的な駆動力の役割を果たす可能性が示唆された。 気道上皮細胞の短絡電流は、サブスタンスPの他、エンドセリン,血小板活性化因などの投与により用量依存性に増加し、また細胞間電位差,コンダクタンスも増加した。以上の反応は、Naチャンネル阻害薬により影響を受けなかったが、Clトランスポ-ト阻害薬であるフロセミドやClチャンネルブロッカ-のジフェニラミンカルボキシレ-トあるいはClをイオダイドにより置換したメディウムで抑制された。したがって、これらのメディエ-タ-は,上皮細胞のCl分泌を選択的に亢進せしめ、気道粘膜上の水分量の増加をきたすものと考えられた。さらに、以上の反応過程には、細胞内情報伝達系のうち、サイクリックAMPとCa^<2+>が重要な役割を果たすことが明らかとなった。サブスタンスPによる短絡電流の増加は、エンケファリナ-ゼ阻害薬のフォスフォラミドにより著明に増強した。よって、以上の作用に対する内因性エンケファリナ-ゼの調節作用の存在も推測された。
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