研究概要 |
平成2-4年度の3年間、電気生理学的および心理物理学的手法を用いてヒトの視覚情報処理を研究し、以下ことを明らかにした。 1.視覚のコントラスト感度検査(CSF):健常人のCSFを測定し、加齢により高空間周波数域でのコントラスト感度の低下を認めた。視神経疾患ではCSFの異常があり、これらの症例の大半に視覚誘発電位異常を認めた。抗てんかん薬の多剤投与群では単剤投与群に比べ低空間周波数域でCSFが有意に低下していた。これらの結果から、CSFが電気生理学的検査と同様に臨床的に有用であることが示された。 2.網膜電図(ERG)と視覚誘発電位(VEP):(1)健常人において閃光刺激とパターン刺激に対するERGとVEPの生理学的特性を検討するとともに、視神経疾患における有用性を検討した。その結果、2種類の異なった視覚刺激を用いれば網膜外層(視細胞、Muller細胞)と網膜神経細胞の機能をそれぞれ検査できることが示された。(2)VEPの後頭部陽性成分(P100)に対応する前頭部陰性成分(N100)の生理学的特性を頭皮上分布と刺激のパターンを変えることにより検討した。N100はP100の双極子ではなく、前頭葉の機能を反映している可能性を認めた。(3)ERG,VEPに対する刺激のパラメーターの重要性についても検討し、臨床応用の際の注意すべき点を明らかにした。(4)アルツハイマー型痴呆では時間周波数依存性のsteady-state VEP異常を認め、コリン作動性ニューロンの異常との関連が示唆された。(5)等輝度色刺激による色覚VEPと仮現運動による運動視VEPを健常成人で記録し、選択的視覚路刺激が可能であることを明らかにした。 3.Random-dotstereogramによる両眼視機能および視覚弁別課題による事象関連電位:予備実験を行ない興味ある知見が得られたが、結論を導きだせるほどのデータは得られず今後の検討課題となった。
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