研究概要 |
当研究代表者は,平成2年度から3年間にわたる科学研究費一般研究(C)(課題番号02670370:体性感覚路の視床からの投射系路および大脳内連合機序の研究)において,正常者およびネコにおける体性感覚誘発電位(SEP)による体性感覚路の投射系路および大脳内連合機序ならびにSEPに出現機序を明らかにした。それは,正常者群のSEP皮質成分の頭皮上分布を覚醒時および睡眠II期(SII),III/IV期(SIII/IV),REM期で解析すると,SII,SIII/IVでP22,P23,N24皮質成分の波形および潜時変化をきたし,REMでは覚醒時の波形にもどることを明らかにした。この結果より,体性感覚路の視床からの投射系路および大脳内連合は睡眠により影響されることが明らかとなった。ネコの実験より,皮質上・内SEPと頭皮上SEPの波形,潜時は異なり,大脳感覚野上2〜5mm間隔のSEP分布の記録でも電極毎に波形,潜時振幅が異なることを明らかにした。この結果より,視床からの体性感覚路の投射は第1体性感覚野(SI)のみならず,連合野,前頭葉にも投射系があることを明らかにした。第2体性感覚野(SII)はネコでは確認できなかった。大脳皮質体性感覚野でのニューロトランスミッターの分析をネコの大脳皮質運動時(M),SI野にて行った。橈骨神経電気刺激によりアセチルコリン遊離量は,SI野で刺激前に比べて,2.0±0.2倍に増加し,M野でも1.5±0.2倍の増加がみられた。しかしながら,頭頂葉では有意な変化はみられなかった。この結果により,SI野およびM野での皮質性SEPの出現にコリン作動性神経伝達物質が関与していることが明らかである。神経伝達物質の各部位での分析により体性感覚路の大脳皮質への投射系をより明らかにできることを示唆している。
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