研究概要 |
G.H.Williams(Harvard Med.School,Boston,MA.)らの診断基準に基づいて、日本人正〜高レニン性本態性高血圧症患者(EHT)におけるmodulator(Mod)およびnon-Modの頻度ならびに食塩感受性との関連性について検討した。EHT21例、正常血圧対照者5例を対象として増塩(250mEq/日、7日間)-減塩(10mEq/日、7日間)のバランススタディを実施した。EHT中正〜高レニン性EHTは20例、うち2例は減塩遵守が不十分であり18例を解析対象とした。増塩期最終日に実施したアンギオテンシンII(AII)-パラアミノ馬尿酸(PAH)負荷試験から、AIIによるPAHクリアランス(C_<PAH>)の減少が120ml/min/1.73m^2以上をMod、同未満をnon-Modと判定した。一方減塩期最終日に実施したAII負荷試験から、血漿アルドステロン濃度(PAC)増加が150pg/ml以上をMod、同未満をnon-Modと判定した。腎血管反応性(C_<PAH>減少)から判定したnon-Modは3例(16.7%)、副腎反応性(PAC増加)から判定したnon-Modは11例(61.1%)、双方の判定が一致したnon-Modは3例のみであった。Williamsらのnon-Modの頻度は約半数であり、副腎反応性から判定した頻度と近似していた。増塩から減塩期にかけてのC_<PAH>、PAC、血中電解質、赤血球膜Na輸送系、血小板AII受容体、Ca調節ホルモンの変化にもModとnon-Modとの間に差を見い出せなかった。食塩感受性(増塩期から減塩期への平均血圧の変化)とAIIに対する副腎反応性との間には負の相関が認められたが、腎血管反応性、Na^+-H^+antiport、血小板AII受容体、Ca調節ホルモン等の間には相関は認め得なかった。 以上より、日本人正〜高レニン性EHTの副腎反応性からみたmodulationと腎血管反応性からみたそれとは独立しているが、食塩感受性には副腎反応性が関連している可能性が示された。副腎反応性から判定する限り日本人正〜高レニン性EHTのnon-Modの頻度は約60%と米国における頻度と近似していた。
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