研究概要 |
細胞膜を介する情報伝達系と各種内因性因子との関連や、それらの高血圧における意義について検討するため、まず、ラット視床下部、延髄からのnorepinephrine(NE)を遊離に及ぼすペプチドホルモンの影響を観察した。神経細胞内でcaecholamtneと共存するとされるneuroptide Y(NPY),galanin(Gal)は視床下部,延髄からのNE releaseを抑制したが、その作用の一部はシナプス前α_2受容体ならびにGi蛋白質を介するものと考えられた。Calct tonin geneーrelated peptideも同部位からのNE遊離を抑制したが、そのメカニズムはCa^<2+>ーchannelを介する細胞内へのCa^<2+>流入の抑制によるものと考えられる。また高血圧自然発症ラット(SHR)ではこれらペプチドのNE遊離抑制作用は減弱していたことから、ペプチドに対する感受性とそれに関連した細胞内情報伝達系の変化が高血圧の交感神経活性調節に重要な役割を持つ可能性が示唆された。次に臨床的検討として本態性高血圧患者から得られた赤血球を用い、実験高血圧の成績と対比しながら細胞膜流動性の測定を行った。電子スピン共鳴ならびにスピンラベル法にて測定した膜流動性は不態性高血圧やSHRの赤血球膜さらにSHRの培養血管平滑筋細胞で正常血圧対照群に比し低下したいたが、これらはCa^<2+>の影響を強く受けた。また高食塩摂取下やNa^+,K^+ーATPase阻害薬のouabain存在下でも膜流動性は低下し、ヒトでは血漿中の内因性ジギタリス様因子の多いほど膜流動性の低下していることが認められた。以上、高血圧では膜流動性に代表される物理的性質にも変化がみられ、それがCa^<2+>、Na^+、さらにそれと関連した内因性因くによって強い影響を受けることが示された。このように、細胞レベルでの情報伝達系や膜自身、およびその機能的な異常、さらにそれらに響影を与える電解質や各種内因性因子に対する反応性の変化が交感神経活性や血管反応性の増大をひきおこし、高血圧の成因に一部関与するものと考えられた。
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