研究概要 |
(1)慢性期心筋梗塞患者におけるAnaerobic Threshold(AT)の経時変化とその規定因子について 慢性期心筋梗塞患者におけるATレベルの運動強度を用いた運動療法による運動耐容能の経時的変化につき検討した。心筋梗塞患者40例を対象として、ramp法によるトレッドミル心肺運動負荷試験を発症後1、3、6か月に施行し、AT、perk VO2を測定した。1)AT、peak VO2は、1、3か月で有意な増加を示し、それ以降には有意な変化は認められなかった。2)1、3、6か月をとおしてAT/peak VO2は約66%、ATレベルの心拍数は約110拍/分でほぼ一定であった。3)1-3か月のAT増加と有意な相関傾向にあったのは左心室瘤の合併の有無、1日総消費エネルギーおよび1か月のAT値であった。これらのことよりATレベルの運動療法が有用であること、左心室瘤の合併が運動耐容能の阻害因子となる可能性が示唆された。 (2)心筋梗塞慢性期における運動療法による運動能力および心機能改善に関する検討 心筋梗塞患者の運動療法による運動耐容能および心機能改善をATの経時変化における心係数(CI)、一回拍出係数(SI)の関与を中心に検討した。心筋梗塞患者25例を対象として、発症1、3か月にAT,CI,SIを測定した。なおCI,SIはCO2再呼吸法より心拍出量を求め算出した。1)発症1、3か月のCI、SIは増加傾向を示した。2)ATとCI,SIには正相関傾向が認められた。3)来院時に冠動脈内血栓溶解療法を施行した例、および左心室瘤の非合併例でAT,CI,SIの増加傾向が大きかった。これらのことより、心筋梗塞慢性期患者に対する運動療法で心臓因子による運動耐容能の改善要因が示唆された。
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