研究概要 |
本研究はIgA腎症患者血清にIgA-フィブロネクチン(FN)複合物が検出されることをヒントとして,その性状が本疾患に特異的であるかどうかを検討した。この間,IgA分子とFN分子との結合性について分析する必要がでてきたので,患者血清FNの断片化の解析と,そのIgAとの結合性についての検討を加えた。1.IgA-FN複合体は,Cederholmらの方法によると,小児IgA腎症患者では52%に高値を認めた。血尿発作より高値となることはなく,紫斑病性腎炎,若年性関節リウマチ(活動期)でも高値のことがあり,IgA腎症に特異的ではないことが示唆された。一部の患者では,血清をgelatin-affinity処理することにより,高い検出信号が得られものもあったが、普遍的な現象ではなかった。しかし,IgA-FN複合体の検出は正常者血清では認められないものでありIgA腎症の病因,特に糸球体へのIgA分子沈着機序との関連についての興味は失われるものではない。2.従来のgelatin-heparin-affinityを利用したFN精製法を用いて血清を処理,SDS-PAGE,銀染色,抗FNモノクロナール抗体によるwesternblotを行なうと,FN分子は種々の断片化を生じており,これはintactなFNを目的として精製行為を行なった場合、夾雑物として処理されてきた分画であると考えられる。またgealtin-heparin-affinityを有する血清内蛋白はFNだけではなく,これらが上述の検出法の特異性に影響を与えている可能性がある。各種抗FNモノクロナール抗体はFNの断片化物にも結合するのであるが,主たる結合部分はintactFNであり,これらモノクロナール抗体を利用したIgA-FN複合物の測定は上述の測定法に比べて優位性を持ちえない。3.今回,IgAとFNの断片化物(42kd)との結合性が示された。これは従来のFNの免疫ブログリンとの結合におけるIgGの優位性についての報告と異なるものである。またこの断片化物はFNのカテプシンD処理物として再現性を持つものであり、今後の検討に有用な材料となる。
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