慢性肉芽腫症の分子的解析を可能にする為に、行なった実験とその成果を列挙する。 1活性酸素産生系に関与する4つの成分、即ち、シトクロムb558の大小2つのサブユニット、47K及び65K可溶性蛋白質因子に対する部位特異的抗体を、その部位に一致するオリゴペプチドを抗原としてウサギで作った。作成に成功したのは、シトクロムb558大サブユニットのN末端から約150ー170番のアミノ酸残基に対する抗ーL123抗体、C末端に約20アミノ酸残基に対する抗ーLc抗体、シトクロムb小サブユニットのN末端及びC末端のそれぞれ約10個のアミノ酸残基に対する抗ーSnおよび抗ーSc抗体である。他に、可溶性因子に対しても、各1個ずつ、部位特異的抗体の作成に成功した(抗ー47および抗ー65)。 これらの抗体を以下の研究に用い、成果を上げつつある。 (1)日本全国の慢性肉芽腫症の系統的診断とこの疾患に対するインタ-フェロン-の効果の検討を北大小児科松本侑三教授の指導のもとに行なっている。 (2)モノクロ-ナル抗体7D5を併用して、慢性肉芽腫症の出生前診断を、産科医や小児科医と協力して世界で初めて可能にした(Lancetに発表)。 (3)細胞膜におけるシトクロムb558の存在様式を明らかにした(日本生化学会で発表)。 2シトロムb558大サブユニット欠損の慢性肉芽腫症の1家系のEBーBリンパ球を確立し、以下の成果を得た(日本細菌学会で平成3年3月28日発表予定)。 (1)細胞表面のシトクロムb558は患者および保因者であるその母親の細胞では検出されず、ほかの家族の細胞では検出された。 (2)患者ゲノムDNAのサザ-ンブロッティングで、遺伝子の一部の欠損が示唆された。
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