研究概要 |
糖および関連物質の生体での代謝や病態を検討することを目的に、これらの一斉分析法を検討し、それを利用した糖代謝異常症の診断や病態研究への応用を試みた結果、以下のような成果を上げることが出来た。 (1)糖、糖アルコ-ル、糖酸の一斉微量定量分析は、capillary GCあるいはcapillary GC/MS法で可能であり、特により精密なクロマトグラム上の分離を必要とするときには、1群の物質に限定した条件設定が必要であった。 (2)この分析法を用いて、種々の糖酸の内、特にaldonic acidsの由来を検討するために、ラットを用いてaldose負荷を行ったところ、負荷されたaldoseからそのaldoseに特異的なaldonic acidやそうでないaldonic acidまでが産生されることが明かとなった。 (3)糖リン酸の一斉分析法として、イオン交換樹脂抽出とtrimethylsilyl誘導体化によるGC分析法を試みたところ、ケト-スリン酸の定量性に問題が残るものの、糖代謝異常症の診断のためのプロファイリングには応用できることが明かとなった。 (4)このGC法により、fructoseー1,6ーdiphosphatase欠損症の診断を行ったところ、早期診断に有用であった。また、この疾患に特徴的な糖リン酸としてこれまで報告されているglycerolー3ーphosphate以外にfructoseー1,6ーdiphosphateや3ーphosphoglycerate、またglyceraldehydeを新たに見いだした。 (5)さらに定量性と高感度分析をめざし、MS/MS法の検討を行ったところ、大気圧イオン化法インタ-フェ-スを用いた機器で効率よく糖リン酸の疑似分子イオンの生成が確認され、LC/MS/MS法としての一斉分析の可能性が示唆された。
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