研究概要 |
先天性水頭症のほとんどに於て,現在なおその原因が明らかにされていない.最近,実験的にはミクソウイルスが発育期の脳に感染した場合,水頭症が惹起されることが示されつつある。本研究では、最も音遍的なウィルスであるムンプスウイルスやパラインフルエンザウイルスをハムスタ-新生仔の脳内または妊娠母獣に接種することにより,(1)水頭症が惹起されるか否か,(2)水頭症の発生機序,(3)経過,などを検索した.その結果: 1.生後2,10,30および50日目のハムスタ-の右大脳皮質内に2TCD_<50>(10ul)のムンプスウイルスを接種した結果,いずれのハムスタ-でも水頭症が惹起されたが,生後早期に接種したものほど水頭症は高度であった. 2.接種後の経過としては,接種3日目より脳室系の上衣細胞表面に炎症細胞浸潤がみられ,5日目には軽度の脳室拡大が観察された.10日目には上衣細胞の脱落や中脳水道の閉鎖が始まり,30日目には大脳皮質の著名な菲薄化が認められた. 3.ウイルスの免疫組織学的検索では,接種2日目より脈絡叢の一部,および側脳室,第三脳室,中脳水道の上衣細胞の一部にムンプスウイルス抗原が認められた.4日後にはほとんどの上衣細胞で抗原が陽性となり,10日以後上衣細胞の壊死とともにウイルス抗原も消失していった. 4.パラインフルエンザウイルス3型の腹腔内接種でもムンプスウイルス接種と同様に水頭症が惹起されたが,発生頻度は低かった(17%). 5.妊娠ハムスタ-では,妊娠14日目にパラインフルエンザウイルス3型の血管内接種により,仔獣の33%に水頭症が惹起された.発生機序として,母体のウイルス血症,胎仔感染,脈絡叢・上衣細胞感染が確認された.
|