研究概要 |
スフィンゴリピドアクチベ-タ-蛋白(SAP)は、3種類(SAPー1,ー2,ー3)知られており、それぞれの異常によるスフィンゴリピド-シスも明らかとなっている。最近、3種のうちSAPー1,ー2が同じプレカ-サ-から由来することがDNAレベルより明らかにされた。今回我々は、母乳中にプレカ-サ-を含む種々の分子量のSAPが存在することを見いだした。SAPの精製は、搾乳により得られた凍結母乳1.5lを85℃10分間熱処理後、遠心上清を得た。上清より80%硫安分画を得、10mMリン酸緩衝液(pH6.0)に透析後、DAEA Sephaーrose、acid precipitation,chromatofocusingにより精製した。SAP分画は4ーMUーβーglucosidaseの活性化にてモニタ-した。一部TSKーGel、Cosmosil(5C4ー300)カラムにて分析した。 母乳中より部分精製したSAPは、4ーMUーβーglucoーsidase,Galceraseを活性化させた。各々の活性化の程度は、至適界面活性剤を用いた測定値のそれぞれ10%,3.5%,4.6%であった。ゲル濾過にて分子量は、25000,等電点はpH4.4にピ-クを持っていた。SDS電気泳動にては分子量14,400に主なる蛋白バンドを認めたが、このバンドはSAPー1,ー2の抗体にては染色されず、αーラクトアルブミンと考えられ、SAPとαーラクトアルブミンがcopurifyされると考えられた。SAPー1の抗体染色では分子量75K,27K,17K以下に、SAPー2では17K以上ではSAPー1と同様のパタ-ンを示し、17K以下ではSAPー1と異なったパタ-ンを示した。逆相カラムでの分析では、acetonitrile54%で蛋白ピ-ク(αーラクトアルブミン)を認め、SAPも溶出された。またαーラクトアルブミン自体にも4MUーβーglucosidaseの活性化作用があることが判明した。我々の研究にて母乳中にこのプレカ-サ-を含むさまざまな分子量のSAPが分泌されていることが判明した。またSAPがαーラクトアルブミンとcopurifyされることも明らかとなった。さらに17K以下ではさまざまなバンドが認められるため、糖鎖の違いによるのかを検討する必要がある。SAPはリソゾ-ムでの局在が判明しているが、一方微量ではあるが母乳中に分泌されていることが明らかとなり、またSAPー1の抗体を用いた直腸の染色においても上皮腺腔内にも染色されることから、この蛋白の細胞内プロセッシング、生理的意義を考える上でも興味深いと思われた。
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