研究概要 |
低酸素虚血性脳症は脳性麻痺の主要な原因疾患であり,その病態を解明することは非常に重要である。今回生後24時間以内の新生仔豚を用い,低酸素負荷前後の脳内エネルギ-代謝(CEM)の動態を ^<31>PーNMRにより測定すると共に血液生化学的検査成績,脳波等と比較検討した。臍動脈カテ-テルを挿入し血圧・心拍数を測定し,気管内挿管後人工呼吸器にて急激に60分前後で低酸素にした群(A群:7頭)と緩徐に120分前後で低酸素にした群(B群:6頭)に分けて検討した。〔結果〕1.負荷開始後両群共に血圧が上昇する間は,CEMは殆ど変動せず,B群ではその後血圧低下と共に,A群ではやや遅れて急激にPCr・pHi・ATPは低下し,Piは上昇した。PCr/Piは,蘇生後血圧の上昇と共にA群は前値にまで回復したが,B群は70%までしか回復しなかった。負荷中両群共血圧上昇時には,PCr/Piはほぼ一定に保たれていたが,血圧低下時B群は血圧と正の相関をもって低下したが,A群では平均動脈血圧60mmHg前後まではほぼ一定で,それ以下で正の相関をもって低下した。蘇生時のpHiは,A群に比しB群は有意に低値を示したが,蘇生後では逆に有意にアルカロ-シスを示した。又両群共負荷中PCr/Piは,動脈血pH・BEと正の相関を,乳酸・ヒポキサンチンと負の相関を示した。これよりCEM障害の臨界値は,動脈血pH7.25前後,BEー7μmol/1前後,乳酸95mg/dl前後,ヒポキサンチン23μg/ml前後と考えられた。2.負荷中脳波はA群ではCEM低下の時期とほぼ一致して,B群ではCEMの低下に遅れて平坦化した。〔結論〕1.脳内アシド-シスが強度になると,蘇生後脳内はアルカロ-シスになることが証明され,Na^+ーK^+ATPaseの障害による可能性が示唆された。2.動脈血pH・BE・乳酸・ヒポキサンチンの変動の値からCEMを推定することが可能であることが証明された。
|