研究概要 |
1.1986年から1990年までの5年間に、59母体の胎児または出生児の双胎を含む60例をヒトパルボウイルスB19感染の有無について調べた。 2.胎児の病態は胎児水腫52例、自然流産1例,胎内死亡1例、胎児胸水1例、胎児腹水1例、低出生体重児3例、仮性半陰陽の男児1例であった。 3.非免疫性胎児水腫22例(双胎を含む)、自然流産、低出生体重児3例と仮性半陰陽の男児の計27例がB19感染の証拠を示した。 4.B19の感染が証明された児の母体は妊娠中に感染機会を有したもの15%,症状を呈したもの30%,B19 1gM抗体が検出されたもの19%にすぎず、感染診断の困難性を示した。 5.これを前進させたのがB19DNA診断であることを明らかにした。すなわち前回の研究で7例の胎児感染例を示し,このうちの5例はDNA診断を行っていた。今回の研究ではPCR法を応用し26例についてはB19DNAが陽性であることを確認,PCR法の応用が少くとも5倍以上の検出力を示したことを明らかにした。 6.胎児が胎内にあるときの診断として、羊水中のB19DNAをPCR法で検出する意義のあることを認めた.これは出生前診断の唯一の確認法であるかも知れない。 7.胎児感染は、伝染性紅斑の発生時期に一致してみられ,1987年の福岡市の流行時には少くとも1700出生児に1例のB19感染による胎児死亡率となった. 8.感染児の病態については,胎児水腫のみでなく広く検討する必要のあることを示した。 9.本研究による多数例の証明は国内的にも国際的にも例がない。
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