研究概要 |
周産期の医療情報は近年のモニタリングの繁用に及んで処理の問題が深刻化をましている。監視装置からのデータは個々のブラウン管に提示され,警告を発するのみであって,その情報は瞬時に失われているのが現状である。そこで,各種監視装置からの生体情報(脳波,呼吸,血圧,心拍,TcPO_2)のアナログ信号をデジタル時系列にAD変換し,生直後から連日,時々刻々遂次データを収集する装置を開発した。更に,収集された情報に自己回帰モデル(赤池)を適用して,脳波活動を初めとする上記各種生体情報活動の時々刻々の“揺らぎ"のパワースペクトルと,その構成要素波(パワー,パワー百年率,減衰振動持続性を示す減衰時間,情報活動量)をCRTやXYプロッターに描記するシステムを開発した。このシステムを用いて出生直後から生後1ヵ月までにえられた連続生体情報に自己回帰解析を施すことによって,従来ではえられなかった新生児生体情報の発達を下記の点で明らかにすることができた。 1.24時間生体情報データの収集,圧縮が可能となった。 2.新生児脳波の睡眠段階自動判定システムの完成:24時間記録脳波を視察的に5段階に分け,各々の赤池情報量基規準を求めて脳波の相同性を自動判定した。また,アーチファクトは脳波パターン識別法により判定,除去した。 3.胎児・新生児心電図RR間融時系列の自己回帰解析と自律神経動態。 4.新生児の呼吸,血圧変動のスペクトル解析。 5.脳波,RR間融,血圧等各パラメータ間の相互応答:夛次元自己回帰モデルを用いることによって,従来のFFTによるコヒーレンスでは得られなかった,情報の流れを定量的に求めることができた。 以上,本システムによる各パラメータ値と,新生児の神経学的予後との関係から,小児脳障害の予防の道を開くことが今後の課題である。
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