研究概要 |
腫瘍細胞にしばしば認められるフィブリンの沈着に注目し、外因系凝固反応の開始機構を検索した。豊富な組織因子(TF)活性をもつJ82細胞とVII,VIIaの結合は特異的で、Ca依存性があり濃度依存性であった。Kdはそれぞれ3.20nM,3.25nMで,TFに対する拡体で細胞を処理するとこれらの結合は阻害された。また結合したVII,VIIaはX因子を活性化し、Xa生成のhalfmaximal pointはそれぞれ3.7nM,3.2nMであった。次にこのβa依存性の結合に注目し、γ-carboxyglutamic aciddomaiuを欠くVIIa(GD-VIId)の結合をみると.特異的に結合はするが.抗TF抗体により阻害されず、結合したGD-VIIaはまッたく第X因子を活性化しなかった。以上よりGDはVIIaの細胞表面TFへの結合に不可欠であると考えられた。次にJ82上のTFに結合した ^<125>I-VIIをEDTAではずし、SDS-PAGE後、オートラジオグラフィーにて観察した。結果は経時的にVIIは細胞上で活性化されており、それは抗TFIgで阻害されるものの、抗プロトロンビン,抗IX,抗X,抗XII因子IgGでは阻害されなかったことよりVII自身のautocatalysis,または特有のプロテアーゼによるものかが考えられた。Serumfreeで培養した4種の腫瘍細胞存在下にXa,II,Caを加えトロンビン生成量をみるとCOLO205,HcpG2,J82,CAPAN-2の順でプロトロンビンの活性化を増強した。さらにHepG2,J82へのX,Xa因子の結合は,Xは結分せず,Xa因子は特異的に結合しKeは1.66nM(Hepg2),1.64nM(J82)であった。結合したXaのプロトロンビンの活性化は、Xa因子の濃度とともに増加し,両細胞とも約5nMで飽和となったが,HcpG2の方がJ82より約5倍トロンビン生成量が多かった。腫瘍細胞上ではVIIが容易に活性化され、さらにX因子を活性化し、Promrombinaee complexを形成し、その活性化を増強させるような反応の場を腫瘍細胞表面が提供していると考えられた。
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