研究概要 |
1.Sodium valproate(VPA)の併用がcarbamazepine(CBZ)の体内動態におよぼす影響を明らかにする目的で,最初に,CBZにVPAを併用したてんかん患者を対象に,CBZならびにその主要代謝経路の第一次代謝物carbamazepine-10,11-epoxide(CBZ-E)に加え,第二次代謝物10,11-di-hydroxycarbamazepine(CBZ-H)の血中濃度を測定した。次いで,両剤併用例において,CBZならびにCBZ-Eの総血中濃度と遊離型血中濃度を測定し,両者の蛋白結合比率を検討した。 その結果を対照としたCBZ単剤投与群の値と比較すると,VPA併用群では,CBZの総血中濃度に対する遊離型血中濃度の比率(F/T比)が増加し,さらにCBZ-EからCBZ-Hへの代謝が抑制され,CBZ-Eの総血中濃度が上昇するのに加え,そのF/T比も増加する。このため,CBZにVPAを併用すると,とくにCBZ-Eに由来する眠気,ふらつきなどの中毒症状が出現する可能性がある。 2.Zonisamide(ZNS)は腸管からの吸収が遅く,血中半減期が長いため,1日1回の投与でも,日内の血中濃度は比較的一定に保たれる。そこで,ZNSを単剤で1日1回服用中のてんかん患児を対象に,血中濃度の日内変動と年齢的変化を検討した。個々の採血は,血中濃度が日内で最低および最高濃度となる,朝服薬直前と服薬後4時間に行ったが,最高/最低血中濃度比は1.25前後であった。また,最低血中濃度および最高血中濃度で求めた血中濃度(μg/ml)/投与量(mg/kg/day)・比は,小児期を通じ,いずれも年齢とともに上昇する傾向にあった。 一方,前述の対象はすべて潜因性局在関連性てんかんの患児であるが,臨床効果は一般に提唱されている治療濃度域15〜40μg/mlとよく一致した。さらに,このZNS単剤1日1回投与法を行い,治療濃度域高値を保っても発作の抑制が困難な患児にはCBZを併用したが,CBZの併用によりZNS血中濃度は日内の最低濃度,最高濃度ともに有意に低下した。
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