研究概要 |
従来より、グラム染色は細菌感染症(髄膜炎、敗血症、肺炎、尿路感染症)の診断、治療の選択には欠くことの出来ない方法である。しかし抗生物質の発達にともない、細菌学的検索以前にすでに投与されていると原因菌の検出されない場合もあり細菌性髄膜炎で実際40%近くは検出されないのが現状である。 アクリジンオレンジ染色法(以下AOSと略す)はDNAのらせん構造に強力に結合する螢光色素である。従来は癌細胞のDNA含有量の定量的解析に使われてきたが、1970年代後半になり細菌株80種を染色、オレンジ色に染色される事が示された。その後1980年McCARTHYらは敗血症の迅速診断法としてAOSの有用性を発表した。しかし、その後の系統的な報告例はない。そこで我には本色素を使用し、臨床的有用性を検討した。 本年度の実績として (1)化膿性髄膜炎10例において、グラム染色法とAOSと比較した。グラム染色陽性例では全例においてAOSも陽性であった。1例AOS陽性,グラム染色陰性例があった。また、治療でこれらの症例においてAOSがグラム染色より1〜2日長く染色された。(グラム染色;平均2.5日,AOS;平均3.7日),培養は1例を除いて3日目以降陰性であった。 (2)また菌培養陰性でもhatex反応(E.coli etc)陽性者で全例AOS陽性で,AOSとLatex凝集反応と相関していた。(敗血症及び髄膜炎で) (3)In vitroで菌数と螢光色素量との関係については現在まだ検討中である。 本法は、グラム染色より非常に簡決であり、また、臨床的に治療の指標となり得る有用な方法と考え、さらに今後も症例をふやしていく予定である。
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