研究概要 |
本研究はmyc系がん遺伝子の一つであるNーmyc癌遺伝子から作られるNーmycタンパクに対する抗体を用いてNーmycタンパクを定量化することにより神経芽腫の診断に役立たせようとするものである。この目的のなかで平成2年度はNーmycタンパクの免疫学的定量法に必須な道具である(1)Nーmyc特異抗原(2)panーmyc特異抗原(3)Nーpanーmyc特異抗原(4)Nーmyc特異抗体(5)panーmyc特異抗体の五つを作成した。抗Nーmyc抗体を用いて神経芽腫の手術摘出組織あるいは培養細胞株のNーmycタンパクを検出するためには免疫組織化学法・Western blot法・ELISA法などがあるが免疫組織化学法では細胞一個ずつのNーmycタンパク量が求まるのに対しWestern blot法やELISA法では細胞一個ずつのNーmycタンパク量は求まらず各細胞のNーmycタンパク量の平均値が求まる。本研究の進行中我々は免疫組織化学法により神経芽腫の手術摘出組織あるいは培養細胞株のNーmycタンパクの量に細胞ごとのばらつきがある事を見いだしこれがELISA法などによるNーmycタンパクの定量化に問題を与える可能性があるので平成2年度はNーmycタンパク量の細胞ごとのばらつきについて詳細に検討を行なった。 その結果,(1)神経芽腫の細胞中のNーmycタンパク量は細胞周期により変動するが,それによる変動よりも細胞が個々に示すばらつきのほうがより大きな変動を示すことおよび(2)細胞集団の全体がNーmycタンパク量の変動を来す場合には個々の細胞のNーmycタンパク量のばらつきは保たれたままでいることが明らかとなった。すなわち臨床神経芽腫においてNーmycタンパク量を定量する際には,個々の細胞のばらつきを免疫組織化学的に求めなくても,Western blot法あるいはELISA法により全体の値を測定することにより腫瘍細胞全体のNーmycタンパク量が求められ得ることが明らかとなった。
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