研究概要 |
ヒトSLEの発症病理の根底にはリンパ球,特にT細胞の機能異常が存在することが推定されている。我々はMRL1lマウスに自然発症的にみられる皮膚病変がヒトSLE患者にみられる紅斑性皮膚病変に病理組織学的に類似し,さらに本マウスに中波長紫外線を照射することによってこの皮膚病変が誘発されることを明らかにした。これらの実績に引き続き,我々は本マウスの背部にみられた皮膚病変部におけるT細胞,及び皮膚におけるT細胞の動態に密接に関係しているランゲルハンス細胞の動態を検討した。 MRL1l系マウスの背部皮膚におけるATP陽性ランゲルハンス細胞及びIa陽性ランゲルハンス細胞はともに加令に伴って有意な減少を示した。背部皮膚病変部では病変の形成される初期にその局所でランゲルハンス細胞は増加し,病変が拡大すると病変の辺縁部では増加し中央部では減少していた。ランゲルハンス細胞のこの傾向はヒトSLEにみられる皮疹においても認められた。 本マスウの皮膚病変部の真皮に浸潤するリンパ球のうちではヘルパ-T細胞が優位であり,初期病変部ではL3T4^+/Lyt2^+値が高値であったが、病変が進行するにつれてこの値の低下するのが認められた。表皮内でIa陽性ランゲルハンス細胞が増加している部分の真皮では特にL3T4陽性細胞が増加していた。本マウスの皮膚病変の発生にはTリンパ球とランゲルハンス細胞が関与していることが推測された。 我々はまた,ヒトSLE皮疹部で組織学的に認められる表皮基底細胞の液状変性は免疫担当細胞による細胞破壊であろうと推定している。本マウスでも時にみられる基底細胞下部の空胞変性は電顕形態学的に液状変性と共通する所見が認められた。
|