研究概要 |
膠原線維の変化:老人の真皮全体の膠原線維束は細く,かつ互いの間隙の開大がみられた。また日光露出部または紫外線による影響を調べると,老人の露出部皮膚・真皮境界部基底板とこれに付着するanchoring fibrilの真皮中への下降所見がみられた。このような所見はPUVA施行部皮膚においても観察された。一方,UVB長期照射ヘア-レスラット皮膚においては9カ月照射では真皮乳頭部の膠原線維の走行の乱れと細線維の太さの不規則性の増加,13カ月ではウランと鉛染色での膠原細線維の染色性の高度の低下が観察された。 弾性線維:老人皮膚では表皮直下の線維の短縮〜消失と網状層の弾性線維の太さの増加と走行の不規則性がみられ,日光露出部では乳頭層から網状層上層に多量の塊状になった弾性線維がみられた。透過型電顕でみると,老化皮膚ではamorphous material(AM)の減少,胞状構造の出現,microfibrilの減少などをみる。一方日光露出部では,AM中に電子密度大な種々の型,大きさの封入体の出現がみられ,最終的には線維の構造の崩壊像が観察される。アミノ酸分析では5人の老人の日光露出部では被覆部に比べてグルタミン酸,アスパラギン酸,スレオニン,セリンそしてリジンの値が上昇していた。 グリコ-スアミノグリカン:デルマタン硫酸,ケラタン硫酸,ヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸につき酵素消化法による組織化学を行ったところ,老人皮膚でデルマタン硫酸とヒアルロン酸の存在を認め,しかも前者の方が後者より量的に大であった。また被覆部と日光露出部とでは,後者のsolar elastosisの存在する真皮上層部ではデルマタン硫酸とヒアルロン酸はほとんど認められなかった。
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