研究概要 |
リンパ節転移の早期診断法を開発し,悪性腫瘍の治療効果と予後の改善に寄与することが本研究の目的である.目的達成のため研究を行い,以下の成果をえた. 1)高分子型造影剤として,今回ヨード化澱粉に着目し,これを組織や臓器内に穿刺注入することにより,所属リンパ節を造影する間接リンパ造影法に成功した.また,撮像方法として,CTを用いることにより診断能の向上を図った. 2)実験は主に成犬を用いて行い,消化管では直腸粘膜下組織に注入し,直腸周囲リンパ節の造影をえた.実質臓器では,肝臓内に超音波誘導下に穿刺注入し,門脈周囲肝リンパ節の造影をえた.泌尿生殖器系では,睾丸内に注入し腰リンパ節及び腰リンパ本幹の造影をえた.また,軟部組織に対しては,足背部に注入し,膝窩部リンパ節の造影をえた.以上のとおり,水溶性ヨード化高分子化合物が間接リンパ造影に応用できることを確認した. 2)間接リンパ造影に用いる造影剤の分子量は5,000から70,000までの間のものが適していることが明らかとなった.また,目的臓器や組織によりある程度異なった分子量の造影剤を用いることが望ましいとかんがえられた. 3)間接リンパ造影にCTを応用することを発案し,その検出能について検討し,高分解能CTを用いれば3mm大の転移巣の診断が可能なことを確認した. 4)今回の研究期間に入手しえたヨード化澱粉は水に溶解後,放置するとヨード原子が澱粉から徐々に遊離する問題点が見られる.ヨードが遊離しないための合成法の確立,あるいは澱粉以外の水溶性高分子ヨード化合物の応用など,今後更に,この方面での研究が望まれる.
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