研究概要 |
ウイスタ-ラットの青斑核のセロトニン免疫反応性(5ーHTーIR)をunlabelied peroxidaseーantiperoxidase(PAP)methodにより検討した。抗体生成はGrotaとBrown('74)の方法に従った。青斑核を含むslabの5μmcryostat連続切片を作製し、交互に5ーHT反応とcresylーviolet染色を施し比較観察した。5,6ーdihydroxytryptamine(5,6ーDHT)又は,5,7ーDHTを術前1〜4日にラット側脳室へ電気泳動的に注入し、次にMAO阻害剤pargyline(75mg/kg)と5ーHTP(200mg/kg)を2hと1hほどperfusion前に注入してから、5ーHTーIRを検出すると脱マスクされた状況で青斑核神経細胞の陽性反応を検出できる。小脳と縫線核を陽性対照群、正常ウサギ血清や生理的食塩水を陰性対照群に用い、神経細胞数はSwanson('76)により3.285±25を基準とし、computer(CosmosomesーS Nikon)を用いて統計学的処理を部分的に実施した。神経細胞の分類法はLaughlinら('86)に従った。青斑核の全体にわたってすべての型の半数以上の神経細胞が5ーHTーIRを示したが、ことにcore cellsがdominantであった。5ーHT uptake blockerであるLillie 110140は青斑核内部で5ーHTーIR減少を示さなかった。血管内皮細胞が5ーHTの血液ー脳関門であるとの従来の説は死後数分間に起こる現象に由来する可能性が強い。5,6ーDHT又は5,7ーDHTの術前投与を行ったすべての例で、青斑核の少なくとも半数の神経細胞が5ーHTーIRを示した事は、青斑核の背側縫線核などからの5ーHTergic axon terminalsを神経毒で除外しても、有意の量の5ーHTが青斑核内に合成される事を強く示唆する。Lillie 110140投与の無効の結果を考えて(1)青斑核の多数の神経細胞が、本来、血液からの5ーHTPを素材として5ーHTを生産する能力を保有する事、(2)この能力は青斑核自体がもつ強いMAO活性によってマスクされていると結論する。この研究成果はActa histochemica vol 89.p.141ー156(1990)に原著論文として発表する。
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